全固体電池の正極材料における微細構造の変化をAI×TEMで解明 — 大阪公立大学から最新研究発表

当社代表が特任教授を務める大阪公立大学・全固体研究領域において、透過型電子顕微鏡(TEM)研究の第一人者である教授より、Li₂S系正極活物質の微細構造変化を TEM と AI解析で可視化した研究成果 が発表されました。(学会:顕微鏡学会/学術講演会、2025年11月18日)
電池討論会概要ver1
Li2S 0907本研究は、全固体Li-S電池の性能向上につながる重要な知見を提示しています。
■ 研究の概要
全固体電池の正極材料として注目される Li₂S系活物質 は、高容量が期待される一方、電子・イオン伝導性が低く、充放電サイクルによって微細構造が大きく変化することが知られています。
本発表では、Li₂S–V₂S₃–LiI 系Li₂S–PI₃–C 系などの硫化物系正極材料を対象に、充放電サイクルに伴う構造劣化のメカニズム を TEM により詳細に観察しました。
■ AIと高速フーリエ変換(FFT)を用いた TEM 画像解析
教授の研究グループでは、TEM画像から微細構造を定量抽出するため、独自の 機械学習+高速FFTベースの解析法 を構築しました。
資料に示されている解析フローは以下の4ステップです:
① デジタルパッチ走査HRTEM画像全体を、小さな領域に分割してスキャン。
② FFTによる特徴抽出各パッチから回折スポット強度面間隔角度情報など、結晶相特有の特徴量を自動抽出。
③ パッチ単位での構造分類抽出した特徴量に基づき、AIが結晶相・非晶質相を分類。
④ ピクセル単位の領域分割高解像度で結晶構造の分布をマッピングし、局所構造を可視化。
この手法により、従来5日かかっていた解析が 約1分に短縮。
量産的な材料解析に活かせる実用性の高い技術となっています。
■ 得られた主要成果
TEM画像解析の結果、以下が明らかになりました:
LiVS₂ 相:約25%
Li₂S 相:約17.6%
非晶質相:約50%
また、結晶方位の情報も取得され、LiVS₂相 → (001)面 Li₂S相 → (111)面 が優勢であると判明しました。
さらに、結晶相と結晶相の境界にナノスケールの非晶質層が形成される ことも確認され、これが正極材料の劣化・伝導性低下と密接に関係している可能性が示唆されました。
■ 研究の意義
本研究は、全固体Li-S電池の反応メカニズムを“微細構造レベル”で可視化し、定量化した点で極めて重要 です。
劣化の起点となる構造変化結晶/非晶質の分布イオン伝導経路に関わる界面構造これらを明確に示したことで、材料設計やプロセス開発における方向性が一段と明確になりました。
■ 今後の展開
本手法は、TEM解析を「経験に依存する手作業」から「AIによる高速自動解析」 へと進化させるもので、全固体電池の研究だけでなく、さまざまな材料分野への応用が期待されています。
当社としても、本研究で得られた解析基盤を活かし、産業応用を見据えた AI材料解析技術の開発を加速してまいります。


